サブカルチャー

「CHIENOWA BASE」は朝霞に根差した本屋さん。本屋の定義をひろげ、朝霞のコミュニティ拠点へ。

本と人が交わる新拠点。朝霞「CHIENOWA BASE」に込めた想い

 

東武東上線 朝霞のまちに、人の輪が生まれる場所。書棚の向こうでは将棋教室、週末はワークショップ、夜は立ち飲みの屋台から笑い声。本屋でありながら「体験」を起点に人と本、人と人を結ぶ拠点。それが「CHIENOWA BASE」です。
2010年から駅ナカで続けてきた街の書店が、2023年に“今の時代の本屋”を模索して辿り着いた新しいかたち。運営母体である株式会社一進堂の塩澤さんに、移転の背景、空間づくりの哲学、そして朝霞というまちへの想いを伺いました。

この度は、塩澤さんにお話を伺いました!

まず、「CHIENOWA BASE」を朝霞市で立ち上げたきっかけをお聞かせください。

1947年にリヤカーでの書籍販売をルーツに、2010年からは朝霞駅の中で、約13年間「ギフトが選べる街の書店」というコンセプトで営業していました。

コロナ禍を経て人の流れや購買行動が変わり、駅ナカでは自分たちが思い描く“街の本屋”の役割を果たしづらくなってきた。そこで2023年、今の場所に移転して「新しいかたちの街の本屋」をつくろう、と舵を切りました。

CHIENOWA BASE 朝霞

「CHIENOWA BASE」の店内を拝見すると、本だけではなく文具や地域とのコラボ冊子といった品揃え、2Fには多目的スペースなど、扱うものも体験も幅広いですね。特徴やこだわりを教えてください。

本屋は昔からコミュニティの一部でしたよね。その“開かれた場”という役割を、今の時代に合うようアレンジしているのがCHIENOWA BASEです。

2階にはアートギャラリーと多目的スペースがあり、私たち主催のワークショップに加え、週末は学研の教室や将棋教室、落語の会など文化的な催しを開催しています。

いまは「本を置いておけば売れる」時代ではありません。でも、本屋に来ること自体には意味がある。だから、本を読まない人にも来てもらえる“動機”を散りばめたい。
体験や出会いを通じて、最終的に本にも興味が芽生える。そんな環境を目指しています。

CHIENOWA BASE 朝霞

「CHIENOWA BASE」の運営にあたり、特に大切にしていることは何でしょうか。

地域の人とできるだけつながること。そして敷居を低くすることです。接客では「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」「こんばんは」を使っています。

本屋って店員とお客さまの距離が少し遠くなりがちなので、言葉の選び方一つで距離を縮められるなら、そこを大事にしたい。プログラムの選定も同じで、どんな理由でもふらっと来られる雰囲気を意識しています。

CHIENOWA BASE 朝霞

地域と本をむすぶ「CHIENOWA BASE」ならではの取り組みについて教えてください。

CHIENOWA BASEを運営する一進堂では「BOOK to ACTION」の一環として毎月の読書会型ワークショップをCHIENOWA BASEで開催しています。本を“読む”から“行動につなげる”へ。テーマ本を起点に、仕事や暮らしの実践知へ橋を架ける場づくりの動機のひとつになれば良いという思いがあります。

CHIENOWA BASE 朝霞

さらに、前身店舗からの地域貢献プロジェクト「1 for Asaka GOALS」も継続。売り上げの一部を朝霞市や市内団体を支援する取り組みなのですが、2025年には16社・団体に協力いただき、年々規模を拡大する取り組みとなっています。

CHIENOWA BASEでは「本1冊の売り上げにつき1円」を寄付する仕組みを設けています。

お客様との関わり合いの中で、喜びを感じる瞬間を教えてください。

書籍というのは、スタッフレベルで仕入れができるので「あのお客さま、きっとこの本が好きだな」と思って入れた一冊が実際に手に取られる瞬間はたまりません。

本は年間で膨大な点数が出ますから、ぴったりの本に出会える確率は高くない。そこに本屋の介在価値があると思っています。

CHIENOWA BASE 朝霞


それから、ずっと通ってくれている子どもたちの成長を、距離を取りつつも横で見守れるのは街の本屋ならでは。親御さんと来ていた子が、高校生・大学生になって一人で訪れ、選ぶ本も漫画から少しずつ広がっていく。そんな変化に立ち会えるのは本当にうれしいです。

一方で、苦労や大変だったこともあると思います。どのように乗り越えてきましたか。

正直に言えば、本を読む人が減っている実感は日々あります。誰かが「本は嫌い」と言っているのではなく、時代とともに本との距離が離れてしまっている。だからこそ、物としての“消費”にとどまらない“体験”を増やす。駅ナカ時代は、装丁の美しさを軸に「贈り物としての本」の提案もしていましたが、いまはまず接点を増やしてCHIENOWA BASEへ来てもらうことを優先しています。

地域性も大切です。例えば、朝霞を舞台にした小説『平場の月』の映画公開(2025年公開)に合わせて、朝霞市と一緒に盛り上げ施策を行い、普段小説を読まない方にも手に取ってもらうきっかけを作ってきました。

CHIENOWA BASE 朝霞

これから「CHIENOWA BASE」として挑戦していきたいことはどのようなことでしょう?

2025年8月から店外で焼き鳥の屋台を始め、夜は立ち飲みスペースとしても開放しています。食は強い“目的”になるので、本屋に興味がない方にも立ち寄ってもらえる。外ににぎわいをつくり、毎日がマルシェのように人と役割が行き交う風景を育てたい。

そして何より、「本屋」の定義を広げ続けたいんです。
本を売る場所にとどまらず、ここへ来れば面白いことが見つかる、興味の幅が広がる、誰かと出会える。
そんな体験を提供できる存在に。ジャンルを越えながら、出会いの母体としての本屋に挑戦を続けていきます。

CHIENOWA BASE 朝霞

最後に、朝霞市の魅力について教えてください。

人口が増え、新しく暮らし始める方が多いまちですが、単なるベッドタウンではありません。入口のクリエイターズコーナーで扱う作品の9割は朝霞の方。挑戦する人が多く、店づくりにも協力してくれます。
企画する人・発信する人が多いので、土日にマルシェやマーケットが同時多発的に開かれるほど。活気があります。
当社の代表も「アサカストリートテラス」という商店街イベントに関わっていますが、こうした動きが“朝霞らしさ”という文化になっていく気がしています。

住所埼玉県朝霞市本町2-7-27
アクセス【電車】
東武登場線「朝霞」駅南口より 徒歩5分
営業時間10:00〜20:00(無休)
電話番号048-450-6760
公式HP等公式HP: https://chienowa-bs.com
公式X:https://x.com/CHIENOWABOOK
公式Instagram:https://www.instagram.com/chienowabase/